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2021.4.10

モノづくりの産地を訪ねて 〜愛知・有松絞り〜【社長 鶴田浩ブログ】

 

僕は名古屋を中心に全国で7店舗展開する「REAL Style」というインテリアショップをやっていますが、日本に息づく匠技によるオリジナル家具を製作する一方で、日本のモノづくりを継承する人や産地を全国規模でつなぐ「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」というコミュニティを立ち上げ、15年に渡って活動してきました。そうした僕の仕事やライフワークの中で出会った日本各地にある素晴らしい「モノづくり」の“今”をお伝えしていきたいと思います。

 

 

今回は、子どもの頃から僕の一番身近にある伝統工芸のご紹介です。

令和元年には日本遺産にも認定された、名古屋の「有松」。ここで400年以上も続く伝統工芸が、皆さんご存知の「有松絞り」です。正式には有松・鳴海絞りだそうですね。

絞り染めの技法は多種多様で世界中にありますが、そのほとんどは手の込んでいないラフな感じのもので、日本ほど細やかなものはありません。実際に、世界で認められている100種ほどの技法のうちの90%は日本で発達した技術だそうで、絞り染めの精緻な柄こそ日本人の感性が作り出したものだと言えます。ところが、高度成長期に中国で生産されるようになると、国内での技術継承がされないまま一時は壊滅しかけてしまいました。着物離れも大きかったと思います。

 

 

 

絞り染めと言えば今も多くの人が、浴衣や着物をイメージするのではないでしょうか。確かに絞り染めは着物という文化のもとで培われた技法ですが、実際にはどんな生地にも応用できることから、今は若い世代があらゆる素材にチャレンジしながら、現代の暮らしに合うものへと変化させています。その一つ、「suzusan」は有松出身の村瀬さんらによって2008年にドイツのデュッセルドルフで立ち上がったブランドですが、有松絞りならではの多彩な技法を駆使した唯一無二の表現が、エルメス、シャネル、ディオールなどから高く評価され、今では世界のトップメゾンに生地を提供するまでになりました。着物から見事に脱却した有松絞りが、その特長を存分に生かした「suzusan」のブランディングによって世界を席巻する技術になったというのは、本当に素晴らしいことです。もちろん最初は売り込みに苦労したようですが、その確かな技術と表現はISSEY MIYAKEが1988年に発表したプリーツプリーツと同じくらいの衝撃を世界のアパレル業界に与えたのではないでしょうか。現在も企画はドイツで行われ、有松には工房とショップがあります。ストールやニットといったファッションだけでなくインテリアアイテムも揃っており、リアルスタイルでは照明やクッションカバーなどの取り扱いをさせていただいています。

 

 

有松から世界的なブランドが生まれたことも嬉しいですが、ブランドだけが一人歩きしているのではなく、同時に有松という町を生かした産地復興がなされていることも、子供の頃からこの地域を知っている僕としては大変嬉しいです。有松は、東海道の中でも開発されずに残っている数少ない町のひとつで、江戸時代の浮世絵にあるような景観が今も大切に保存されています。街道沿いには格子の商家やなまこ壁の蔵が建ち並び、中には徳川14代将軍・家茂が来訪したという茶室が、200年以上の時を経て現存しているというから驚きです。産業観光としても見逃せない地域だと思います。毎年6月に開催される有松絞りまつりでは、職人さんの実演や、絞り染め体験、この地区に伝わる山車やからくり人形を見物しながら、江戸の頃の賑わいに思いを馳せて楽しんでみてはいかがでしょう。ぜひ、足を運んでみてください。

 

現在、弊社では名古屋東店で5/9まで「suzusan POPUP」を開催中です。

また、9月から12月にかけて弊社各店で巡回展を開催予定です。

こちらもぜひお立ち寄りください。

 

 

リアル・スタイル株式会社

代表取締役 鶴田 浩

 

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